F値(絞り値)というのは、デジタル一眼レフを購入したばかりの初心者の方にとっては、よく分からない、聞きなれない言葉かもしれません。
しかしF値(絞り値)というのは思い通りの写真を撮る上で非常に重要な要素です。
この記事を読めばF値(絞り値)についてしっかりと理解を深めて今までよりももっと良い写真を撮れるようになります。
目次
F値(絞り値)とは?
F値(絞り値)とは、カメラのレンズの焦点距離を有効口径で割った値です。
F1.4、F2、F11などのように表現されます。
F値の数字が小さいほど、絞りは開かれて光は多く取り込まれよくボケます。逆に数字が大きいほど絞りは閉じられ、光は少なく取り込まれボケは少なくなります。
少し難しかったと思うので、さらに詳しく解説していきます。
レンズの絞りを実際に見てみる
まず、最初にレンズの光の量を調節する「絞り」というものを実際に見てみましょう。
これはデジタル一眼レフカメラ用のシグマ30mm単焦点レンズです。一眼レフ本体から取り外して、レンズの内側から見ています。
この矢印の部分が「絞り」です。この絞りを調節して、カメラは明るさを調節しています。
このレンズのF値(絞り値)はF1.4~F16となっています。現在、このレンズの絞りは最も閉じている状態ですので、F値(絞り値)はF16です。
次に絞りを開放してみます。
これは絞りを開放した状態です。絞りを開放とは、絞りを限界まで開いた状態のことを言います。
現在、このレンズの絞りは最も開いている状態ですので、F値(絞り値)はF1.4です。
F値(絞り値)のボケ具合の比較
こちらの表はF値(絞り値)の特性についてまとめた表です。
F値(絞り値)の数字が小さいほど、絞りは開かれて、『背景ボケが多くなる』、『光の通る量が多くなる』という特徴が出てきます。F値(絞り値)の数字が大きいほど、絞りは閉じられて、『背景ボケは少なくなる』、『光の通る量が少なる』という特徴が出てきます。
F値(絞り値)の数字が小さいほどよくボケる!比較してみた
さて、F値(絞り)の数字が小さいほど大きくボケるという話をしました。
どの程度写りに変化があるのでしょうか。
実際に写真を見ていきましょう。
上の写真は、F値(絞り)の数字が最も大きいF16で撮影したものです。
最も大きい数字ということは『背景ボケは少なくなる』とお話ししましたね。
フォーカスは手前のコップに合わせていますが、奥側のダンボー君もはっきりと見えます。
その後ろの壁紙などもくっきりと見えますね。
上の写真はF5.6で撮影してみました。ダンボー君は少しだけボケていますね。
一眼レフカメラとセットになっているキットレンズなどはF5.6前後が性能の限界であることが多いです。残念ながら、一般的なキットレンズではこれ以上のボケは出来ません。
上の写真はF2.8で撮影してみました。ダンボー君が大きくボケて手前のコップが強調されていますね。一眼レフらしい強力なボケですね。
上の写真はF1.4で撮影してみました。かなり強烈なボケですね。
ダンボー君は強烈にボケていますし、さらにコップの隅などにもボケが出ています。
F値(絞り値)の数字が小さいほど、たくさんの光を取り込める!
さて、次は光の通る量の変化についてです。
次の図をご覧ください。
F値(絞り値)を大きい値に1段階変えることを『F値(絞り値)を1段大きくする』又は『絞りを1段階絞る』と言います。上の図の例で説明すると、F値(絞り値)をF4からF6.3にすることです。
F値(絞り値)を1段階大きくすると、絞りの開口面積は2分の1になって光の通る量は半減します。また、F4からF11に設定した場合は、2段階絞る訳ですから、絞りの開口面積は4分の1になり、光の量は4分の1になります。
逆に・・・。
F値(絞り値)を小さい値に1段階変えることを『F値(絞り値)を1段階小さくする』又は『絞りを1段階開く』と言います。上の図の例で説明すると、F値(絞り値)をF6.3からF4にすることです。
F値(絞り値)を1段階小さくすると、絞りの開口面積は2倍になり、光の通る量は2倍になります。F6.3からF2.8に設定した場合は2段階開く訳ですから、絞りの開口面積は4倍になり、光の量は4倍になります。
このようにして、カメラは写真の明るさのバランスをとっています。
F値(絞り)を小さくして撮りたいケース
F値を小さくすると、背景は大きくボケます。よく雑誌やポスターなどで女性にだけピントが合って、お花の背景がフワッとしたような綺麗なボケになっている写真を見たことがあると思います。
背景に余計なものが写り込むことを防止して、主役を引き立たせたい場合に有効です。
F値(絞り値)を大きくして撮りたいケース
画面の隅々までピントが合った写真を撮りたい場合はF値(絞り値)を大きくして撮ると良いでしょう。
こちらは近所の山を登ってきたときの写真です。F値(絞り値)をF11として画面全体にピントが合うように設定しました。
F値の目安について
それでは、F値の目安について解説していきたいと思います。
風景写真のF値はF5.6~F8がおすすめ
風景写真の場合は、背景までしっかりと綺麗に撮りたいためF5.6~F8くらいまで絞って撮りましょう。
風景写真では全体にピントが合っていることが大切です。また、万が一ピントを外してしまっても、ある程度絞っていれば問題なく撮影できる場合もあります。
物撮りではF2.8~F8くらいを状況に応じて撮る
物撮りの場合は、F2.8~F8くらいを目安にして撮影しましょう。
あまり開放しすぎて、F1.4などで撮影してしまうと、物自体がボケすぎてしまう場合があります。
一眼レフ、ミラーレス一眼の画面を確認しながらボケ具合を調節しましょう。
ポートレートではF1.4~F2.8くらいで撮る
ポートレートのような人物撮影では、比較的F値を低くして開放気味で撮影することが多いです。
特に背景のノイズを消してシンプルに撮影したい場合は、F1.4やF2.8などで撮影すると良いと思います。
室内のスタジオなど背景がしっかりと定まっている場合や、背景をしっかりと撮りたい場合はF8などで撮影しましょう。
集合写真ではF8~F11くらいで撮る
集合写真においては、F8~F11くらいで撮影すると良いでしょう。
集合写真では全員の顔にピントが合っていることが絶対条件です。
F2.8などの開放気味に撮影してしまうと、全員にピントを合わせるのが困難なため注意しましょう。
室内など暗いシーンではF値はF1.4~F2.8
室内などの暗いシーンではF値はF1.4~F2.8くらいの設定がおすすめです。
F値は小さくすると光を多く取り込むことができるため、室内では、なるべくF値は小さくしていきましょう。
絞り開放のデメリット
絞りを開放すると、背景は大きくボケて光を多く取り込むことができます。
そのため、一見デメリットがないように思えますが、意外と弱点はあります。それぞれ解説していきます。
絞り開放では、周辺減光がある
絞り開放では、周辺減光があります。
絞り開放ではレンズの全面を使って撮影を行います。しかし、レンズの周辺は光を取り込むことが苦手です。
絞り開放で撮影すると、写真の四隅が暗くなってしまいます。
なお、最近のデジタル一眼レフやミラーレス一眼であれば自動補正機能があり、自動的に周辺を明るくする補正を行います。
また、ライトルームなどの編集ソフトで補正もできるため、周辺減光が大きいからダメというわけではないと思います。
絞り開放では、解像度が落ちる
絞り開放では、解像度が落ちます。
例えばF1.4のレンズであればF2.8~F5.6くらいが解像度のピークになる場合が多いです。
F5.6のレンズであればF8前後が最高になる場合が多いです。
1段~2段ほど絞ると解像度が大きく向上するため画質が気になる人は少し絞りましょう。
ただ、新しい設計のレンズでは開放でも十分すぎるほどの性能があります。
管理人自身も絞り開放で撮影する場面が多いため、画質が落ちるから絞る、というのは特に気にしなくても良い時代にはなってきてきます。
絞り開放では、ボケすぎることがある
絞り開放ではボケすぎることが多々あります。
この写真は、桜と月をF1.4で撮影しました。背景はよくボケています。
しかし、桜のお花自体もボケてしまっており少し残念な感じになっていますね。
このように絞り開放では被写体がボケすぎてしまう、ということが多々あります。
こういう場合は少し絞って撮影しましょう。
絞り開放のやり方
一眼レフやミラーレスでF値を変更する場合は、モードダイヤルを『Av』又は『A』に変えます。(メーカーによって表記が異なります。)
この状態で、ダイヤルを回すとF値を変えることができます。
このモードは絞り優先モードと言って、F値(絞り値)はカメラマンが自由に設定して他の設定はカメラにお任せにする、というモードです。
絞り開放にしたら、絞り値(F値)を一番小さくしましょう。絞り値(F値)が一番小さい状態が、絞り開放の状態です。
絞り優先モードの使い方については下記記事で詳しく解説しています。
また、絞り優先モード以外にもマニュアル撮影でもF値(絞り値)を変更することができます。
マニュアル撮影は次の記事で詳しく解説しています。
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絞り以外にもカメラには基本的な用語があります。これらについても解説しています。
絞り、シャッタースピード、ISO感度を理解したら、次はマニュアル撮影に挑戦してみましょう。